商業登記・企業法務

資本金の額が法令に従って計上されたことを証する書面

2月 6, 2007

会社法が施行されてから、旧商法・旧商業登記法時代にはなかった設立登記の際の添付書面として、「資本金の額が法令に従って計上されたことを証する書面」という書類が新たに必要となりました。

資本金の額は、実際に株主となる人から払い込まれた金銭を基準として決定されるのですが、会社法では、この実際に払い込まれた金銭から「設立に要した費用の額のうち設立に際して資本金又は資本準備金の額として計上すべき額から減ずるべき額と定めた額」(以下、設立費用控除額)というものを引いた額を基準として決定することになっており、その設立費用控除額がいくらなのかを証明するために「資本金の額が法令に従って計上されたことを証する書面」が必要なのです。

しかし、会社法が施行された時点で、設立費用控除額を計算する方法・基準がありませんでしたので、常に設立費用控除額0円として設立登記を申請していた、というのが実際でした。

そして、いまだ設立費用控除額を計算する方法はできていません。そんな中、「株式会社の設立の登記等の添付書面である資本金の額の計上に関する書面の取扱いについて(通達)」(平成19年1月17日付法務省民商第91号)が発出されました。

<参考>当該通達
株式会社及び合同会社がする設立の登記(出資に係る財産が金銭のみである場合に限る。)並びに合同会社がする資本金の額の増加による変更の登記(社員が出資の履行をした場合であって、出資に係る財産が金銭のみである場合に限る。)の申請書には、当分の間、資本金の額の計上に関する書面の添付を要しないものとする。

ただし、株式会社の設立の登記に関し、改正省令の施行日前に会社法第32条第1項の決定(同項第3号に掲げる事項として設立に要した費用の額のうち設立に際して資本金又は資本準備金の額として計上すべき額から減ずるべき額(以下「設立費用控除額」という。)を定めた場合における当該決定に限る。)があった場合又は設立費用控除額を定款で定めた場合(改正省令附則第5条第3項参照)については、なお従前の例によるものとする。

要するに、設立費用控除額は当分の間0円とし、そうすると「資本金の額が法令に従って計上されたことを証する書面」を添付する意味がなくなるので、当分の間、設立登記の際には当該書面は添付しなくてもよい、ということになりました。

ただし、気を付けなければならないのは、当該通達の適用は金銭出資の場合に限られているということです。

当分っていつまで?金銭出資の場合に限定されているのはなぜ?とつっこみどころはたくさんありますが、当分の間は「資本金の額が法令に従って計上されたことを証する書面」とはお別れです。

  • この記事を書いた人

宮田浩志(司法書士)

宮田総合法務事務所 代表司法書士

後見人等に多数就任中の経験を活かし、家族信託・遺言・後見等の仕組みを活用した「老後対策」「争族対策」「親なき後問題」について全国からの相談が後を絶たない。

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